『ITC富山公開セミナー デジタル経営カンファレンス in TOYAMA』 開催報告
2025年2月18日、タワー111・スカイホールにて「”人”を惹きつける経営~デジタル経営の真髄~」と題し、『ITC富山公開セミナー デジタル経営カンファレンス in TOYAMA』を開催いたしました。
会場開催のみの実施でしたが、80名以上という多数の方にご参加いただきました。
まず基調講演として、株式会社ネオレックスの代表取締役社長 駒井 拓央 氏より「『日本でいちばん大切にしたい会社』が大切にしていること~マネされる会社を目指して~」と題してご講演いただきました。
同社は小規模なソフトウェア開発会社でありながら付加価値の高いシステムを開発・提供していること、そして手厚い家族手当や社内風土にあらわれる人を大切にし幸せを追求する経営が高く評価され、第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞にて「審査委員会特別賞」を受賞されています。
講演ではまず同社が提供している製品・サービスについてお話いただきました。
主力商品であるクラウド勤怠管理システム「キンタイミライ」は、大企業市場で国内トップシェアを誇り、iPhoneアプリ「MyStats」は、世界100ヶ国、27万人以上にダウンロードされています(※)。
全国・全世界に価値を提供し続けている同社ですが、従業員数は50数名とのことで驚かされました。
高い製品価値はもちろんですが、4割以上の顧客が10年以上継続利用という形で現れているように,徹底的にお客様に寄り添うといった高い顧客満足度を追及する点が、支持されているように感じました。
続けて、同社の社内の取り組みや企業文化についてお話頂きました。
まず企業文化で特徴的であるのが、「『部下』『指示』『やらせる』という言葉を使わない文化」です。
社員も「社員」と呼ばず「メンバー」と呼ぶそうで、真の意味で社員を「家族」と捉えて大事にするという同社の文化が窺えます。
勤務制度に関してもフレックス制度やリモートワーク、育休、時短勤務、また各種手厚い手当など、大企業もかくやという充実した制度を実施されておられますが、一足飛びではなく徐々に整備されていった点もお話頂き、より良い働き方を常に模索されてきたところもメンバーを大事にする同社の経営が現れていると感じました。
同社は新卒採用においても応募多数で優秀な人材をコンスタントに採用されています。
メンバーの幸せを目的とした経営が優秀な人材の確保と低い離職率の実現につながっており、人材の確保や採用が難しい昨今において、一つのアプローチとして大変参考になるのではないかと思います。
最後のまとめとしてお話された、少しずつやれることをやってきた成果に対して、「よい経営をマネしてもらえれば、小さなネオレックスでも、世の中をよくできる」という言葉が大変印象的でした。
(※:「MyStats」は本講演時点では開発を停止されています)
次に事例発表として、株式会社ワカヤマの代表取締役 若山 健太郎 氏より「ロボットとDXでつなぐ伝統と若者~新しい産業のかたち~」と題してご講演いただきました。
福井県鯖江市にある同社は各種めっきや塗装などの表面処理を行っており、鯖江市特産の眼鏡フレームはもとより様々な工業製品の表面処理の実績を多数持っておられます。
DX推進の事例として、生産・検査工程のロボット導入による自動化や事務業務に対するクラウドサービスの効果的な適用をお話いただきました。
一般的なDXの進め方に囚われず、効果を見極め創意工夫で活用している内容は、DXとは何をするべきかということについて気付きを与えて頂ける物であったかと思います。
特に、ベンダーから実現は難しいと言われたことに対してもそのまま鵜呑みにせず、冷静に分析・改善を行い実現までたどり着く点は、「自社のことは自分たちが一番詳しい」ということを改めて気付かせて頂きました。
また採用関係に関して、DXを難しいものではなく「かっこいい」と定義し、若者に魅力的なスタイルの工場としてきた内容をお話いただきました。
工場見学や新卒採用の増加(従業員数1.5倍、見学者200名)など若者を惹きつける企業となっており、大変参考となるアプローチであるかと思います。
DXを難しいものと捉えがちですが、「DXはできることからやってみる」という考え方はDX推進に悩む方々へのエールとなるのではないでしょうか。
最後に特別講演として、コーセル株式会社の相談役 谷川 正人 氏より「『業務成果』と『人と組織の成長』の同時実現を目指した経営」と題してご講演いただきました。
同社は産業用電源装置を主要製品とする製造業で、従業員数721名(連結)を擁する大きな企業です。
「品質市場を核に社会の信頼に応える」という経営理念のもと、一貫して品質の向上に取り組んでいる中で、経営サイドも含め企業の全組織を効果的・効率的に運営するためのTQMについてお話頂きました。
同じ価値観・同じ方向性を向くため、いい戦略・方針(いい目的)を作るだけでなく、その戦略や方針を浸透・腹落ちさせるスキルが大事であり、組織としての連携力、個人の能力・実行力も含めて各階層別に必要なスキルを体系的に定めおられます。強い組織を作る点で重要なことではないかと感じました。
方針管理においても価値を中心とした計画を作成することを定めており、経営課題・目標といった上位方針との整合性をとることができるようになっています。
この他にも様々な取り組みをお話頂きましたが、すべて「全社視点で自立した組織」を作ることにつながっており、組織の仕組み作りの緻密さに圧倒されるとともに、これらの実施を着実に行っている点に組織としての力強さを感じました。
こういった堅い仕組みがある中では社員が機械のようになりギスギスした状況になるように思いますが、チームは個人的な相談もできるほどに良いコミュニケーションが取れているとのお話でした。
全部門で教育規定を定めるとともに認定制度を有効活用し、会社側がどういったスキルを求めているかを明確にするなど、ビジョンとミッションが明確かつキャリアの道筋の見通しが明るいことが良好なチーム形成につながっているように感じました。
人にも企業にも「いい習慣をつくる」ことが、組織の問題解決と課題達成につながり、ひいては『業務成果』と『人と組織の成長』の同時実現につながっていくという同社の事例は、様々な企業において大変参考となる内容であったのではないかと思います。