年間売上 7億 ⇒ 20億 を目指して
事例の概要
X社では、2005年5月~8月にかけてITコーディネータプロセスに基づき、経営戦略を立案し、中長期経営計画を策定しました。
経営戦略策定メンバーは、社長と営業マン3名の計4名で実施しました。選定理由は、顧客の声を直に聞いているからです。
会社としての重点経営課題が、明確になった時点で、設計、製造等の各課ごとに、『重点経営課題に基づいた実行計画』を作成しました。
また、今後の実施状況のモニタリングの仕組み、取決めを行いました。
なお、X社は、中国に金型製造の独資会社(Y社)を展開中です。
X社とY社の経営戦略の整合性を保つため、Y社の中長期経営計画の策定も行いました。
会社概要
所在地:富山県高岡市
業種:精密金型製造業
従業員:55名
(会社名などは先様の希望により匿します)
戦略概要
目標 3年後 売上20億 経常利益率15%
5年後 売上○億 経常利益率○%(非公開)
経営戦略の策定プロセスを実行して、明確になった戦略の方向は、『受注の拡大』と『生産能力の拡大』でした。
具体的な営業戦略と実行計画、新生産方式のプラン等、きめ細かな計画が策定されました(HPでは非公開とさせていただきます)。
経過
X社の経営戦略立案は、ITコーディネータプロセスに従い下記の内容で実施しました。
経営戦略策定会議の開催は10回、1回当り2時間~3時間で実施しました。
回 | テーマ | 実施内容 |
---|---|---|
1 |
ビジョンの明確化
|
・X社の社長から、3年後、5年後のビジョンについて語っていただいた ・経営目標についてのコンセンサスを形成した ・ITコーディネータが『経営戦略策定の進め方』の説明を行った |
2 | SWOT分析 |
・内部環境(自社の強み、弱み) 外部環境(機会、脅威)を洗い出しSWOT分析表にまとめた |
3 | 経営課題の抽出 戦略マップ作成 |
・前回作成したSWOT分析表を参照し、経営課題(会社としてやるべき事)を考え、書き出しを行った ・バランススコアカードの戦略マップを使用し、経営課題の関連性を明確にした |
4 | 重点経営課題 |
・図式化された経営課題から重点的に取り組む課題を選択し、優先順位付けを行った (「3年後まで」と「5年後まで」とを分けて重点経営課題を設定した) |
5 | 財務分析(P/L)財務分析(B/S) |
・ITコーディネータが『損益計算書の読み方』を解説した ・自社の財務指標を算出し、黒字企業の平均指標との比較を行った (経営戦略策定メンバー全員) ・重点経営課題の解決による財務的な効果をシュミレーションした |
6 | ・ITコーディネータが『貸借対照表の読み方』を解説した ・自社の財務指標を算出し、黒字企業の平均指標との比較を行った (経営戦略策定メンバー全員) ・重点経営課題の解決による財務的な効果をシュミレーションした |
|
7 | 財務目標の作成 |
・重点経営課題および目標とする財務指標値をターゲットにして、3年後の損益計算書、貸借対照表を策定した (投資計画、人員計画等も盛り込み中期経営計画書とした) |
8 | 実行計画実行計画作成 |
・重点経営課題に基づいた具体的な実行計画案を作成した (経営戦略策定メンバーでプラン案としてたたき台を作成した) |
9 | ・各課(設計、機械加工 等)の課長に経営戦略企画書の説明を行いプラン案を参考にして、各課ごとの実行計画を作成した | |
10 | モニタリング計画 |
・実行計画をモニタリングするための仕掛け、取決めを行った |
※財務分析と財務目標の作成は、ITコーディネータプロセスには含まれていませんが、X社の戦略上、重要なポイントと判断し実施しました。
IT活用について
今回の実行計画は、ほとんどの部分が、人と行動に依存するものとなりました。
IT活用に関しては、顧客サービスの強化として、顧客が、インターネットで、オーダーした金型の進捗状況を見れる仕組みのプランが策定されました。
ただし、既に、生産計画・進捗管理システムが有効に活用されているというベースがあり、その一部をWEBで公開するだけであり、特にクローズアップするには至りませんでした。
ITコーディネータの所感
今回の経営戦略策定メンバーである営業マン3人は、最初は、『何が始まるんだろう』『難しそうだな』という顔つきでした。
第1回目に『経営戦略策定の進め方』を説明したところ、不安は解消され、経営戦略策定会議の目的についても十分理解されたようでした。
第2回目からは、たくさんの意見を引き出すことができ、和やかな雰囲気の中で会議を進行することができました。
当初は、『3年後 売上20億 経常利益率15%』という目標が、『夢』の数字に感じらました。
経営戦略立案のステップを進めていくうちに、『頑張れば出来る』数字として感じられるようになり、実行計画を作成し終えた時点で、『実現する確率が高い』数字と感じています。
今後は、ITコーディネータとして、毎月 モニタリングを実施し、X社の目標達成に向けてのサポートをしていく所存です。
支援したITコーディネータのプロフィール
川上 渉
ITコーディネータ富山 副会長
有限会社 オフィスケイ
代表取締役
経歴:
・システムエンジニア、経営コンサルタントを経て、平成11年に独立。
・平成14年 ITコーディネータ補に認定、平成15年 ITコーディネータに昇格。
(2005/9/21寄稿)